中性色の服ばかり着ている

タイプミスしたら即終了

230204 人生に合格できない

MOS Word2019 Expertの試験を受けてきた。満点だった。

もっと喜んでもいいんだろうけど、なんか、感動ねぇ〜〜。合格は合格だしせっかくだから普段行かないスシでも行くかと思って街をウロウロしてたけど胃袋との折衝にまた失敗して気づいたら地元でいつものラーメン食ってる。そんな一日もまあ悪くはないだろう。

試験会場は(そもそも人生において訪れる試験会場というやつはたいていがそうだが)はじめて訪れる場所だった。本当に試験のためだけの空間というかセンターという感じだった。壁一面がロッカーになっていて、待合の椅子は離して並べられている。その白い風景には時間の蓄積や人間の手垢みたいなものが全然感じられなくて、なぜかコロナワクチンの接種会場の、そのために今さっき組み上げられたという感じを思い起こさせた。
持ち物をすべてロッカーに預けて試験会場にはいる。あまり広くはない窓のない部屋の壁に沿って席が並んでいて、俺が言われた番号の席はちょうど部屋の真ん中くらいだった。モニター、でかめ。キーボード、ダークグレーでほんの少しだけ丸みを帯びた薄めの。右手に、DVDドライブみたいな感じの平べったいなにかの機器、その上に騒音が気になったら着けてもいいよ用のイヤーマフが置かれていたが、実際のところ試験中はむしろもっと騒音が欲しいくらいに静かで出番はなかった。左手、試験官を呼ぶための黒い四角い呼び出しボタン。その奥に、ファミレスの席に置いてあるような透明のアクリルのメニュースタンドがあって、それは結局なんのためなのかわからなかった。受付で持たされた、相当使いまわしていると見える試験マニュアルをそこに挟むと、やっぱり重力に負けてくにゃっとなって、収まりがいいのか悪いのかいまいちよくわからなかった。
試験自体の内容は、テキストに付いてきた模試プログラムの内容とそう大差はなかった。自動で開かれていくドキュメントに指示通りの操作を加えていく。問題なのは全て解答し終わった後だ。ペーパーテストであれば普通に見直しをするところなのだが、この試験の場合は一度回答したドキュメントを開き直すと、なんか思ってたのと違う見た目になっていることがある。言われた通り保存もしたはずなのに、どうしていいかわかんなくてマジで助けてくれと思った。試験内容のことなのでどのくらいまで言っていいのかわからないが、特に、見た目に影響しない操作の場合、ここで不安になってもう一度その操作を行ったら、その追加操作自体が余計なものと判定されて不正解になるのでは? いや、でも…………みたいな感じで思考は同じところを周り続け、気がつくと俺は自分が作った落とし穴に囲まれて一歩も動けなくなっている。先回りして悪い状況ばかりを想定して何もできなくなる、俺の人生そのもののような時間だった。よく考えなくても、ドキュメントの完成形が合致していれば正解なのだから、その場で見なかったことにして戻ってももう一度操作を加えても結果は一緒なのだが、どうにも全ての選択肢が不正解に思える瞬間が俺にはよくある。結局合格だったけど、こういう成功体験は不思議と自分事として捉えることができなくて、明日からも不正解におびえる日々が続くことに変わりはない。
それにしても会話のない一日だった。試験官ってただでさえやることない仕事だし、そのうち機械に変わるんだろうか。俺はその方が気楽でいいなと思う。