中性色の服ばかり着ている

タイプミスしたら即終了

221106 『もうひとつの顔』/『三つの百景』

神戸ファッション美術館にはじめて行ってきた。
神戸エリアではあるんだけど結構乗り替えがあって大変だった。でも楽しかったし行ってよかった。

神戸ファッション美術館
ロバート・キャパ セレクト展 もうひとつの顔

「キャパの十字架」を読んでなんとなく知った気になっていたけど、実際に「崩れ落ちる兵士」を見ると、思ったより小さいな、と思い、それが入ってすぐにあるので人の流れの中でじっと見てもいられず、銃から離れつつある指先の感じだけを記憶した。
活き活きとしたたくさんの顔を見た。特に面白いと思ったのはツール・ド・フランスを写したもので、道路沿いの観衆が全員左を向いている写真と右を向いている写真があって、自転車は1ミリも写ってないのにめちゃくちゃレースの写真だった。

右上のポストカードの写真は展示されていなかったけど、別バージョンの立って歩いている写真が展示されていて、それも気に入った。立ち姿も表情も自然でキュートで、後ろに写っていた関係ない人までもが絵のような景色を構成していた。俺がちゃんと注意してないだけで現実ってけっこう絵なのかもしれないと思った。「戦災孤児を『養子縁組』したアメリカ兵」というタイトルの意味深な括弧が示すように、この写真が撮られるに到るまでに、多くの混乱や犠牲やしなくてもいい遠回りがあったんだと思うんだけど、写ってる全員が純粋に今を楽しんでいる表情に見えて印象的だった。

神戸ゆかりの美術館
三つの百景 川西 英

キャパだけ見て帰るつもりだったが、かわいさに惹かれてこちらも見ることにした。
標題通り、百景を構成する作品たちがズラッと並び、実際の版木も展示されていたりして、存分に版画の世界に浸ることができる。
色遣いとか、曲線と直線の組み合わせでできた雲の形とか、なんとも言えず牧歌的でかわいかった。街の犬や鳥なども表情はないのに不思議な愛らしさがある。↑のポストカードの牛とかめちゃくちゃかわいくないですか?
街並みや人の格好から時代の違いが感じられるけど、たまに「こいつ観光客だな」って佇まいだけでわかる人がいて面白い。美術館の光景を版画にしたら俺もまだそういう雰囲気を出してるかもしれないと思った。

どこに行っても自分がそこに住んでることをアイデンティティにできないというか、有名な観光地に行って知った気になるぞみたいな部分が多くて、結局のところ俺は精神的に地元民であれていないし地元を知らないんじゃないかと思いながら生きてきた気がする。この展覧会で描かれていた街並みや美しい景色だけでなく、そこに息づく人々の営みや楽しみを見て、改めて俺はこれから兵庫県民なんだ、と思ったし、この版画の中の人たちのように、それをいちいち意識するでもなく、ただ地元をよく知り地元で息をする人間になりたいなと感じた。そういえば大阪、東京ときて県民になるのはこれがはじめてだと気づき、どうでもいいけど良いことだなと思った。
美術館の外に出ると、駅前や六甲ライナーの車内に英語で喋ってる子供が多くて驚いた。雑然とした三ノ宮周辺も楽しいけれど、少し移動すると全然違う世界になるのが面白い。そんなのは日本全国どの街だってそうなんだろうが、そういう当然のことを自分が肌で感じていると感じることもこれからはおろそかにしないでいきたい。