ずっと読もうと思ってたやつ。
タイトルに違わず、夢を見ているときの脳の動きについての様々な研究が紹介されている。フロイトの夢判断の途中で挫折して10年近く経つ俺にとって、新鮮な発見に満ちた本だった。
目次をざっと見てまず目に引っかかるのが、"NEXTUP"というなんだか精神論を感じそうな怪しげな文字列だ。これは可能性理解のためのネットワーク探索(Network EXploration To Understand Possibilities)の略で、夢を見る理由を説明するために作者らが編み出した新しいモデルである。こういう略し方ってアニメに出てくるかっこいい組織名みたいでかっこいい。
夢を睡眠に依存する記憶処理の一形式であると捉えるNEXTUPの考え方がこの章以降も随所に出てくる。それに関連して出てくるデフォルトモードネットワーク(DMN)についての解説が特に印象に残っている。知的な作業を行っているとき、脳内では活発になる領域とおとなしくなる領域があるが、作業内容にかかわらずおとなしくなる領域はいつも同じなのだという。ならその領域はいつ活発になるのかというと、課題をこなした後の休息中やレム睡眠中らしい。休息中に脳は何もしていないわけではなく、DMNと名付けられたこの領域が、次は何をどうやって処理しようかな~と判断しているそうだ。しかもその領域は前日に何をしていたかで変化する。難しい言葉についていくので精一杯だった俺もさすがにここは脳おもしれ~と思った。空き時間をボーッと過ごすのは無駄だという思いがずっとあって、そういう時間にスマホも本もないと落ち着かなくなる性質なのだが、それがかえってよくないのかもしれない。
夢の研究の歴史に始まり、夢の段階、PTSDや悪夢、予知夢といったさまざまな切り口から夢について見ていく。夢をテレパシーの媒体にすることができるという説を科学者はどうしても頭ごなしに否定したくなっちゃうんだよねという話や、性的な夢を見る頻度は実際の性的な行為をする頻度や本人の興味とはあまり関係がないという話も面白かった。でもやっぱり一番気になったのは明晰夢の話だった。
明晰夢を見ているとき、自分が求めることを直接強く望むのではなく"期待"すること、例えばそれがある光景をイメージしながらゆっくり振り返ることが有効と書いてあって、あれって共通認識なんだと思ってびっくりした。俺も熟練者ではないけど、明晰夢を見てるときって、いきなりそれを目の前に出現させようとすると成功しないので、それがあることをイメージしながら扉を開けたり穴に飛び込んだりするっていうやり方に自然と落ち着いていた。それでも扉の先に望んだものがある確率は体感で4分の1に満たないので、また次の扉を探して歩き続ける。俺の明晰夢はそういうゲームと化している。
あと、明晰夢は油断してるとすぐ失敗する綱渡りのようなものという記述も、それな! と思った。最近気づいたんだけど、明晰夢って立体視に似てる。言葉ではうまく説明できないコツがあって、それを掴むと結構簡単に入ることはできるんだけど、維持するのは難しい。
そして一番ワクワクしたのが、事前に決めた眼球の動きをしてもらうことで、明晰夢を見ている被験者とコンタクトをとるという実験がされているという話だ。実際わりとできるらしい。これめちゃくちゃすごくないですか? 夢を見てる人とリアルタイムで意思疎通できるって。この実験がさらなる技術の進化につながり、夢と現実の境目をより自由に移動できるようになったらと思うと、異世界の扉が開くような、楽しみでたまらない気持ちととんでもないことが起こるのではないかという不安が混ざりあったとにかくすごいことが起こる!! という気持ちになる。いいなあ。俺もその実験参加したいわ。なんか国内でそういう一般人が参加できるやつないのかな。
明晰夢の登場人物に話しかけたり課題をやってもらうというのは考えたことなかったので今度やってみようと思う。
この本を通じてさまざまな夢の活用法を知り、まだまだ研究途上の分野だけどとにかく脳と体のためになんかが起こってるっぽいあの時間をもっと自分なりに活かしたらスゲー得できるかも というのが全体読んでみての感想だ。睡眠の本を読むたびにそう言ってる気もする。
寝具や室温といった睡眠環境、入眠時刻や二度寝については書いていなかったので、次はそのあたりの文献も読んでみたい。
明晰夢の話ばっかりになっちゃったけどとにかく面白かったです。ワクワクしたい人はぜひ。
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